2008年06月12日

ほんとうの自分をとりもどすことと、ほんの少しの変化◆トーベ・ヤンソン『ムーミン谷の11月』

未消化の書評&レポ予定▶

・やさい10周年ライブレポ
・大陽を盗んだ男(文太)
・バキ13巻(烈海王の脚が食われたことについて)



唐突に手に取った、生まれて初めてのムーミン原作が『ムーミン谷の11月』だったのですが

ムーミン一家が最初から最後まで出てこねええええ!


というすごい渋い構成の作品でした。
ヤンソンという人について人から話を聞く機会があって、すごい興味を持って原作にてを伸ばしたわけなんですが、プロフィールから伺えるヤンソン像が先にあってこの本を読むのはどうだったんだろうか、と、読み終わってからちょっと悩みました。

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ていうのは、いろんな意味で哀しい話だったんですよこの話。
なんていうか、孤独を描いてる。
ムーミン一家の不在によって、ムーミン一家像はすごい鮮やかに浮き上がってるのだけど、それは登場人物たちが各々に思い描く、充足した心象風景なんですよ。
それは後述するけれども、決してムーミン一家そのものじゃない。

そして、ムーミン一家不在のなか、集ってくる登場人物たちは(ミムラ姉さんを除いて)誰もが欠けているものを求めにムーミン屋敷を訪れる。
そんな話。


「相容れない性質の違う人たちがどうしたら共存できるのか」つうテーマを追及したのがムーミンシリーズだったらしいんだけど、結局誰1人本当の意味で共存することも理解しあうこともできなくて、束の間共同生活をするけど、結局また各々の場所に帰っていくんですよ。

スナフキンとムーミンの友情も、実は単に馬が合う同志なだけで、しかもそこには結構スナフキン側にでかい幻想があるんじゃないかとか示唆してるように私には読めました。
んで、何だかどこまでも哀しかったりするんだけど、各人は何かしらの満足を得て自分の場所に戻っていくあたり、トーベ・ヤンソンの優しさなのかな、とか思ったりした。



ムーミントロールって、最初は真っ赤に目を怒りに燃やして登場したキャラクターだったそうで、若いヤンソンの社会に対する怒りを投影した、自身の分身のような存在だったそうなんですが、やがて「ムーミン一家」シリーズを手がける頃には、むしろムーミン一家というのは彼らを取り巻く登場人物たちの安らぎのような存在になっていったようです。
そして、かわりに彼らを取り巻く人々は、ヤンソンの見てきた人々の姿であるとともに、ヤンソン自身の欠片が込められているように感じました。
だから、その姿がどれだけ滑稽で風刺に満ちていても、哀しくて愛すべき存在として描かれていて、そして、「ムーミン一家」という安らぎを強く求めているヤンソン自身の願いのようなものを感じてしまって、何だか切なかったりしたのでした。



そんな中、ホムサ=トフトというどこか超常的な存在が出て来るのですが、彼はずっとヘムレンさんのボートの中で暮らしていたにも関わらず、想像力が異常に豊かなのですよ。会ったことの無いムーミンママの姿をくっきりと思い浮かべることができるくらいに。そして、想像によって一匹の虫(多分ホムサの心)をその世界に生み出し、想像していくことで大きくしてしまったりする。
そんな彼が「思い描いていた理想のムーミンママ」から、「生身のムーミンママ」を想像できた時、その虫とも正面から向き合うことができるのですが、おそらくただ1人、生身のムーミン一家を思い描けたのが、彼らと出会ったことのないホムサ=トフトで、そして彼らの帰還を出迎える資格と必要があるただ1人の人物だというのは、すごく色々なことを考えさせられました。
んで、すごく渋くてきれいな光景でした。





ちなみに、始終気が立ってるわたしとしては、ミムラ姉さんを見習えばいいのか、とか一瞬思ったのですが、それは以前、麻倉葉の心境を目指してみたのと似たり寄ったりなんじゃないか、と気がつき、実行したら絶対胃腸を壊すのは間違いないので、やめることにしますた。
結局、ストレスを感じる度に奇声を発したり発狂状態になったりするスナフキンの行動パターンが一番他人事じゃなく思えるんだとしたら、「スナフキンはスナフキン以外のものになれない」つうようなことをヤンソンも書いてたし、自分は自分でいるしかねえのだ、と思うことにしました。

…ていうか、スナフキンは私の中ですごい飄々としたイメージで、あの何が何でも単独行動を取ってる様子から、昔スナフキンの渾名をバイト先で頂いたりしたものでした。なんていう勿体ない名前を、とか思ってたのですが、実はなにげにすごい感情的というか、ストレスに弱い体質で、だからマイペース人生な人だったということをこの本で知って、すごいびっくりしました。

スナフキン全然大人じゃないじゃん笑。
むしろ大人げないというか、突発的に変な行動を取る変な人で、ホムサ=トフトに「どうしてみんなに尊敬されてるのかわからない」とか思われたりしてる笑(別に尊敬されてないと思うよ、と、ホムサ=トフトに言ってやりたかった)。

このスナフキンだったら、そこそこ自己投影してもあんまり恥ずかしくないかもしれない、とか、ちょっぴり安心したのでした笑。
んで、ほんとはムーミン一家のストレスの鎮め方が一番カコイイよなーとか思ったり、そういう行動を取る人を尊敬したりしてて、私もそうなりたいと思うんだけど、でも、結局奇声を発しちゃうんだ。


私も禁止のかんばんはだいきらいです。
posted by deco at 22:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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