2009年03月20日

今更クレーメル版ピアソラ

引っ張り出して聴いててやっぱりすごいウトーリ。.
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何年か前、クレーメル版ピアソラブームの終わり頃、クレーメルの来日公演あったんですお。そんで、タンゴ好きの母を誘って聴きに行ったです。
母に言わせると、「クレーメルの演奏は洗練され過ぎてて、泥臭さが無いからピアソラ本人の演奏の方がやっぱ好き」なんだそうで、本当にタンゴが好きだとそういう独特の生な感じがたまんないんだろうなー、と、ピアソラ本人の演奏と聴き比べた時に思いますた。つか、私がぬげえええと思ったスリリングな陶酔感っていうのは、ピアソラから来たものじゃなくて、クレーメルから来たものだったのがわかった感じでした(笑)。

何ていうのか、悪くないけど、期待していたものとは違った感じというか。
これはピアソラのせいじゃなくて、クレーメル版にあった「何か」をピアソラに求めた私が、余程タンゴを知らなかった、というだけの話だと思う。何の準備もなく、まずピアソラ本人版と出会ってたら、全然違う感触を持てたんだろうな、と思うと、ちょっと損をした気がしたり。


もともと、土着性の高い音楽に現代版アレンジをかましたというか、テイストを取り入れた感じの音楽って、それだけでなんか反感感じるので(沖縄風メロディラインのポップスとか中華な坂本龍一とかすごいきらいだし、民族音楽風な菅野よう子も、そのアレンジが魅力的なのは認めた上で、すごい臭みを感じる)、ピアソラ本体を聴いて眼から鱗が落ちてもおかしくないと思う…というか、少なくとも別物としての音の豊かさに嬉しいびっくりを感じてもいいはずだよな、と思う。

確かに、タンゴ本来の持つパッションみたいなものはすごく感じられたんだ。
あ、好きじゃないけど演歌のコブシな感じ(笑)と共通するような血の匂いというか、情念というか、そういうニュアンスが、土着の音ってやつなんだろうな、って、初めて分析的に思った。……でもピアソラ本人も、タンゴの中では革命児的な存在なわけで、つまり、タンゴ的にはいったん十分に洗練をかました音に当たるんだおね。その後、母に逆に誘われて名前も知らないタンゴの演奏聴きに行ったけど、ほんとに別物だったし。逆に別物過ぎて異様に面白かったし。あれ聴いちゃうと、確かにピアソラでも「洗練され過ぎててちょっと物足りない」って母が言ってたのがわかる気がしたし。
でも、ピアソラがタンゴに決定的な何かを加えたのは確かなんだろう、っていうのもわかる気がしたし。


その上で、やっぱりクレーメル版がすごい好き、というのは、これはクレーメルの音が好きってことなんだろうな、と思うしかないんだろうな、とか思った。その後、ピアソラ以外のクレーメルも聴いたけど、同じ何かが流れてた。
んで、生のクレーメルは、私が彼の音の何が好きなのかをすごい浮き彫りにしてくれたなー、と、思い返してから気がついたり。
なんつうか、その緊張感がとにかく凄かった。音と音の間の無音状態にも、一瞬たりとも気を逸らすのを許さないような密度の高いテンションがそこにはあって、それは大げさに言えば、「聴いてる自分」って状態を意識する程度の気の逸らしすら許さないような圧倒的な音のうねりだった。最初から最後まで。忘我の境地ってこういうやつなんだろうな、としか言いようがない、音が自分なのか、自分が音なのか、そこで流れている感情が自分なのか音の世界なのか、どうだっていいぜそんな事柄、っていう感じ。
CD音源でもそれは味わえたから惹かれたんだろうに、生のクレーメルの空間は更に純化されていた、そんな感じ。


ま、思えばそういう感触をくれる音楽が私は好きで、それ以外は期間限定的なマイブームって感じなんだよな、とかいうのに気付かされたりした。

私があんまり幅広く音楽を聴けない理由。あと、「好きな音楽のジャンル」とか聞かれても返答に困る理由。

我を忘れさせてくれる程の音だったら、ジャンルなんかどうだっていいもん。そんで、好きな映画やアニメのサントラだったとか主題歌だったとか(笑)、そういう補足説明抜きで心を揺さぶってくれる音なんか、実はそんなに無いし、わりと出会いのタイミングが大事だったり(笑)とかするもんだなあ、とか。
あ、やさいもね、私の中では我を忘れさせてくれる音をくれる存在なんだお。ライブ中で流れてる空気は、それは純粋なんだお。(なんか必死だな自分)


私は音楽にはまじで疎いし、歌も音痴だし楽器も全然弾けない。音楽の理論だって知らない。だから、これは素人のたわごとなんだと思うんだけど。
密度の高い音って、すごいシンプルだなーって思うんですお。
無駄なものが一切無いし、「これおいしいでしょ」って下心も萌えも一切無い。ただ、必要で必然な要素だけがそこにある感じがする。どんなに音が厚みがあろうが複雑な技巧が入っていようが、そういう意味で、本質としてシンプルだな、って思うん。

思えば、徹底的に好きな文章も映像もそういう性質があって、どれも味わうのに体力要るけど、いったん味わいはじめたら、すごい至福をくれる気がする。

……とか書いてて思った。

そうか。
私が中東の景色や空気が好きなのも、ウィーンのそれも同じく好きなのも、同じことなんだー。どっちもサービス精神ゼロで、それを受け入れるかそうじゃないかのどっちかでしかないところが好きなんだー。日本の緑にお腹一杯感を感じるのは、サービス精神満載って意味で豊穣だからなんだなきっと。たいがい傍には温泉あるし温泉まんじゅうあるし、色鮮やかで、誰もが何かしらを楽しめるようにできてるし。それは自分が国内では本当に都市居住者で、国内の緑に触れるといったら所詮『観光地』に触れるってことだ、っていうのも関係あるんだと思うけど(そして私は日本の土着的な感性は正直苦手なので、テリブル東京以外の場所に住み着きたいとは全然思わない)。


そうか、モーツァルトさんに興味無いのはサービス精神旺盛だからで、ヴァーグナーさんに惹かれないなのは萌え系だからなのか笑。



……とかいってるとだんだんこじつけがましくなってくるけど(笑)、要は音楽は自分の素養と無縁なせいなのか、味わう時の敷居も低いので、弱ってる時の自律調整にはすごく良いなーと思います。そしてうっとりして手が完全に止まったり、こういうとりとめねえらくがきをしたくなったりするというわけですた。



正直、母の「洗練されすぎてて余り馴染めない」って言葉を聞くまでは、これは誰もが涅槃状態になるような圧倒的な音で、だから(クレーメルの)ピアソラブームが生じたんだと思ってたお。笑。

その後アマゾンとかの書評で、「これはあくまでクレーメル解釈のピアソラで、ピアソラそのものではない」こと=ピアソラ愛好者にとっては不快感を感じる人も当然いることを知って、なるほどって思ったし、そういえば「ブームが過ぎた」ってことは「定番じゃない」ってことで、つまり普遍性や汎用性が高いわけじゃないってことなんだおな、とか思ったり。在庫も中古の方が数多いもんな(笑)。
思えばやさいも「騒音」「音痴」「不協和音な感じで不快」とかいう意見多数だもんなー。


あ、別にマイナー好きな自分カコイイとかいう結論を書きたかったわけじゃなくて、単に自分がうっとりするものに対しては「これだけうっとりするものなんだから誰だってうっとりする筈だ」とか思いがちなんだけど、それはすごいひどい思いこみなんだおね、って改めて思うお、ってことで、人様に自分の趣味を押し付けそうになる癖には気を付けよう、という話だったのですた。
だけど、誰か共感してくれないかなーとかやっぱり思っちゃうのが、人の性なのですおね。あハ。

posted by deco at 02:49| Comment(3) | TrackBack(0) | エセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
でこさま、ひさびさの書き込みですね〜。
その昔、でこさまにクレメール版ピアソラのCDをいただいた私は、このコメントを読んでCDをひっぱりだして聞いてしまいまた。やっぱりよかったですよー。わたしはクレメール、好きですけどねー。別の意味でピアソラも好きですが。ご存知のように、私もでこさまにまけずおとらずのマイナー好きだと再認識したりして。(笑)こんど、べんじぇるーんのことも書いてくださいませね。
Posted by その昔でこさまにクレメール版ピアソラのCDもらった者です at 2009年03月20日 20:33
多分合ってると思うんだけど(べんじぇるーんってとこで笑)、べんじぇるーん買いましたお!

んで、多分あなたの場合はピアソラの方をちょっとだけ余計に好きかな、とか読んでみたりしてます(笑)。

あと、やっぱりマルーラが観光ルートに組み込まれているのはすごくよくないと思ったの!野暮って意味で。
Posted by deco at 2009年04月14日 00:08
その後Queenというかフレディを見てて、観光地のサービスてんこもりと真のサービス精神とはぜんぜん違うんだなーとか、フレディのサービス精神はハードボイルド全開というか、つまるところShow must go onなんだおなーとか思って、「サービス精神を頭ごなしに否定すること言ってすごいフレディごめんなさい」って思ったのですた。
Posted by deco at 2009年07月28日 02:01
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